くすり関連
高齢者とくすり
Ⅰ.高齢になると多くの病気にかかりやすくなります。
Ⅱ.高齢者の身体と薬
Ⅲ.どのようなことに注意すればよいのでしょうか?
Ⅳ.「かかりつけ薬局」を持ちましょう
はじめに
高齢になると、薬を飲むことが多くなります。薬を飲むときには、どんなことに注意すればよいのでしょうか。
薬を安全に使うためには、正しい知識を持って、医師や薬剤師の説明どうりにきちんと使用することが大切です。
薬について疑問に思うこと、不安に感じることがあれば、気軽に薬局お薬剤師に相談して下さい。
Ⅰ.高齢になると多くの病気にかかりやすくなります。
体の働きは加齢とともに低下していきます。また、高齢者はいろいろな病気を持っていることが多く、何種類もの薬を使用する機会が増えます。
Ⅱ.高齢者の身体と薬
薬の血中濃度
あなたはお酒を飲まれますか?
お酒は、飲んでしばらくすると顔が赤くなったり、良い気分になったりしますね。これは、アルコールが体内で吸収され、血液とともに全身を回り、作用するからです。しかし、時間がたつと酔いは醒めて、また普通の状態に戻ります。
これは血液中のアルコールを肝臓が分解し、腎臓で濾過して尿として排泄しているからです。
薬が効くのもこれと似た仕組みです。薬が体内で吸収され、血液中の薬の濃度(薬の血中濃度)が上昇し、ある一定の濃度を超えると効果が現れます。
そして、薬もまたお酒と同じように主に肝臓で分解(代謝)され、やがて腎臓などから体外へ排出されます。
薬が効く仕組み
薬がきちんと効果を発揮するには、必要な量を、決められた時間に飲むことが大切です。自分に勝手に飲む量を増やしたり、回数を増やすと、(左のグラフ)Aのように薬の量が多くなりすぎて、危険な副作用を起こす可能性があります。
また、飲む量を減らすとCのような状態となり、薬が効かず、病気が悪化してしまう恐れもあります。
効果的な治療のために、決められた量や回数を守って服用しましょう
薬の副作用
薬を飲んだときに、本来の目的以外の作用が現れることがあります。
これを副作用といいます。
高齢者に副作用が起きやすいのはなぜでしょう?
身体の機能が低下しているため
人間の身体は、加齢に伴い、肝臓で薬を分解する能力や、薬を腎臓から体の外へ排出する能力が低下します。
また、高齢者は体の中の水分の割合が少なくなり脂肪が多くなるため、脂肪にとける薬が体の中にたまりやすくなります。
その結果、薬が強く効きすぎて、副作用が現れることがあります。
多くの薬を飲んでいるため高齢者の多くは複数の病気にかかり、たくさんの薬を飲んでいます。
そのため、薬と薬の相互作用が起こる可能性が高くなります。日常生活の問題点など加齢に伴い、目が見えにくくなったり、耳が聞こえなくなったりします。
そのため、薬を見まちがえたり、薬の飲み方を聞きまちがえることも考えられます。
副作用を防ぐには
副作用には、風邪薬を飲んで眠くなったというような軽い症状から生死にかかわるものまで、さまざまなレベルのものまであります。
しかし、副作用は誰にでも起こるわけではありません。個人差(アレルギー体質など)や飲んだときの体調なども影響します。
重い副作用でも、その前兆として軽い症状が現れることが多いので、この初期症状を医師や薬剤師から聞いて気を付けていれば、大事に至ることは無いでしょう。
副作用をむやみに心配し、必要な薬を飲まないと、病気を悪化させたり治療が長引く原因にもなりかねません。
薬は、正しく使えば、副作用が現れる確率は低くなります。
薬の飲み忘れをふせぐために
薬局では、飲む時間ごとに薬を1つの袋にまとめてお渡しする等の工夫を行っている場合もあります。薬剤師に相談して見ましょう。
もし、飲み忘れたら?
薬によっては、抗生物質など一定の間隔できちんと服用しなければならないものや、糖尿病の薬のように、飲み方を間違えると低血糖をおこしてしまうものもあります。
また、抗てんかん剤などは、血中の薬の濃度をきちんと維持することが大切なため、不規則な飲み方は危険です。
飲み忘れに気づいたら、自分で判断せず、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
薬を飲み忘れた場合の対処法や、食事が不規則な場合の飲み方等を事前に相談し、確認しておくとより安心です。
知っておきたいことば
薬と食べ物にも相互作用があります。
例えば
ワルファリン(血栓を防ぐ薬)と納豆
カルシウム拮抗剤(血圧を下げる薬)とグレープフルーツジュース
テオフィリン(ぜんそくの薬)とタバコなど・・・
これらは、同時に摂取するとすぐに危険な状態になる・・・ということではありませんが、「薬によっては注意を要する食べ物がある」ということを覚えておき、薬を受け取ったら、注意すべき食べ物や飲み物を薬剤師に確認しておきましょう。
また、薬とアルコールの相性はとても悪いので、薬を飲んでいるときは、できればお酒は我慢して下さい。
Ⅲ どのようなことに注意すればよいのでしょうか?
薬と高齢者の日常生活
高齢者はさまざまな体調の変化が起きやすくなります。
例えば、
尿が出にくくなる
目がぼやける
足もとがふらつく
食べ物の味がわからない・・・など
もしあなたにこれらの症状がでたら、「歳をとったためだ」とか「病気になったかもしれない」などとすぐに思いがちではありませんか?
しかし、これらの体調の変化は、薬で起こる可能性もあるのです。
勿論すべて薬のせいだとはいえませんし、病気を治すために飲んでいる薬ですから、怖がって勝手に薬をやめるのは好ましくありません。
薬を飲むようになってからの体調変化は、老化現象だとか年のせいだとか、ご自分で判断せずに、医師や薬剤師に伝えるようにしましょう。
飲む量・期間をまもりましょう
医師から処方された薬を飲んでいて、症状が良くなったので薬をやめた・・・
こういった自己判断は危険です。
症状が軽くなっても病気そのものが治っていない場合があり、治りかけた病気をまたひどくすることもあります。
さらに、高血圧や糖尿病の薬などは、急に薬をやめると危険な場合があります。 また、薬は飲む量を半分にしたら半分だけ効く、梅飲めば効果も倍、ということはありません。
医師は「患者さんが決められたとおりきちんと薬を飲んでいる」という前提で治療の計画を立てます。
勝手に薬を飲まないでいると、薬が効いていないと判断し、より強い薬に変える場合も出てきます。
飲む量や期間はきちんと守りましょう。
処方された薬はあなただけのもの
医師が処方した薬は、患者さん一人一人を診断したり検査したうえで、それぞれの症状、体質、年齢などを考えて処方されています。
薬局や薬店で買うことのできるいわば万人向けの薬(大衆薬)とは違い個人にあわせたものですので、人によっては毒となることさえあります。
症状が同じだからといって、あなたの薬を他の人にあげたりするのはやめましょう。
Ⅳ 「かかりつけ薬局」を持ちましょう
近年、医師が患者さんの治療に必要な薬の名前や使用法を書いた処方せんを発行し、患者さんがその処方せんを街の薬局に持って行き、薬局の薬剤師が調剤してお薬をお渡しすることが多くなりました。これを「医薬分業」と言います。医師と薬剤師という2人の専門家が2重に確認することにより、薬の安全性が高まります。
調剤を受ける薬局は、患者さんが自由に選ぶことができます。
自宅近くやいつも行く商店街の薬局など、自分が一番気軽に相談でき、また信頼できる薬局を「かかりつけ薬局」に決めましょう。
何処のお医者さんにかかっても、一ヶ所の薬局で調剤を受けることが大切です。
「かかりつけ薬局」では、あなたの体質、薬によるアレルギー、現在服用中の薬などをお尋ねし、処方された薬とともに「薬歴」に記録して、あなたへの薬についての説明や相談に役立てています。
基準薬局の看板
基準薬局とは:設備や業務のないようについて、一定の基準を満たした薬局を薬剤師会で認定したものです。
かかりつけ薬局を選ぶめやすにして下さい!
(社)日本薬剤師会 発行の「高齢者とくすり -薬との上手なつき合い方-」より、引用致しました。
(一部省略させて頂きました)